2019/09/12更新

ITエンジニア40歳定年説について現役SEが考察してみた〜40歳を超えると限界だと言われる理由とは?

IT業界でよく聞くのが「ITエンジニア40歳定年」説です。年齢がある程度以上になると第一線では戦えなくなる、というものです。この定説は、はたして本当なのでしょうか?今回は、ITエンジニアが40歳で限界なのかどうか様々な角度から検証してみます。

技術的問題

まずは技術力の観点で考えてみましょう。何と言ってもITエンジニアのキモとも言えるのが技術力です。技術力が無ければ、ITエンジニアを続けていくのは困難です。それでは、40歳くらいのITエンジニアの技術力はどのようになっているのでしょうか。

通常のキャリアパスの場合、入社してしばらくはプログラマをやります。場合によっては、例えばネットワークエンジニアやインフラエンジニアなど、いきなり専門的な職種の見習いから始まることもありますが、大体はまずプログラマとしてロジカルな思考の育成や、仕事の流れを覚えていきます。

概ね5年くらいしてから、システム設計の一部を担当しはじめ、徐々にシステムエンジニアに移行していきます。そして概ね40歳になるまでに、ITエンジニアとして以下のような技術を習得していきます。

  • プログラム言語の知識
  • 実行環境(サーバやデータベース)に関する知識
  • 基本設計の技術(データベース設計、画面設計、帳票設計など)
  • 詳細設計の技術(プログラム設計など)
  • テストの技術(単体テスト、結合テスト、総合テスト、システムテストなど)
  • 各種ドキュメントの作成技術

この中で、プログラム言語の知識と実行環境の知識は、陳腐化する可能性が高い知識です。例えば入社以来、汎用機上で動作するCOBOLの開発ばかりをやってきたITエンジニアは、汎用機とCOBOLに特化した技術を習得します。その領域では非常に優秀な能力を発揮しますが、もし汎用機+COBOLの仕事が無くなれば、もっとも得意とする技術を活かすことができなくなります。

以来、こうした環境を40歳になるまで続けていたとしたらどうでしょうか。突然、Linux+JavaでWebシステムを構築する仕事をしろと言われて適応できるでしょうか。これが、年齢によって生じる技術的な障害です。

新しい言語や環境にスイッチ可能か

先程の「新しい技術に適応できるかどうか」の問いの答えは、ノーであり、イエスでもあります。適応できるかどうかはITエンジニアの心構えで決まります。例え汎用機+COBOLの仕事をやっていても、LinuxやJavaの知識を日頃から習得するよう地道に努力していればスイッチが可能です。

というのも、両者ともコンピュータシステムの基本的な部分は同じで、基本設計や詳細設計、テスト技術やドキュメント技術といった、表面的なアーキテクチャに依存しないスキルは共通だからです。逆に、新技術やトレンドに無関心で、向上心に欠けるITエンジニアは、環境の変化について行けません。この場合、ITエンジニア40歳定年説が当てはまってしまうのです。

ITエンジニアとして40歳まで仕事をすればコンピューティングの根っこの部分は体得しています。ただ、新しい技術を学び続ける姿勢がなければ、それを活かせなくなってしまいます。そして40歳くらいでITエンジニアとしての限界が訪れてしまうわけです。

身体的問題

昔に比べると随分改善されましたが、それでもIT業界は体力勝負なところがあります。納期は絶対的な存在で、これを後ろにずらすことは至難の業です。例えばユーザとの仕様の詰めが甘く、開発の終盤になってから仕様変更がたくさん発生しても、納期は変更できないことがほとんです。

こうなると、毎晩遅くまで仕事をしてリカバリするしかなくなります。30代までは徹夜をしてもピンピンしていて軽く仮眠をとればすぐに体力も戻りますが、40歳を超えると、こうした体力的な無理が効かなくなってきます。昔のようにがんばりたくても、疲れが抜けず、どうにもなりません。これがITエンジニア40歳定年説の根拠のひとつ、体力の低下です。大枠で考えると、どの業界も一緒な弊害ではあるんですけどね。

身体を酷使しない術を考える

しかし、これは知恵をしぼれば回避することができます。そもそも、体力勝負になるようなプロジェクト運営になっているのが間違いなのです。先程の例なら後半に仕様変更が多発しないよう要件定義でしっかりとユーザの要求事項を深掘りし、また契約的にも要件定義以降の仕様変更ができないようにすべきです。

ITエンジニアは技術力を磨くと共に、こうしたプロジェクトマネジメントの力を磨いていかなければいけません。体の衰えを知恵でカバーする。この発想がなければプロジェクトは常に体力勝負になり、40歳を超えたITエンジニアはついていけなくなります。

立場的問題

ITエンジニア40歳定年説のもうひとつの根拠は、会社のキャリアパスです。多くのIT企業では、40代以降のITエンジニアとしてのキャリアパスが整備されていないのが実情です。特に中小企業では管理職にならなければ出世できないケースが多く見られます。IT企業なのにプログラマ→エンジニア→管理職というパスしかないのです。

ひどい場合は、40歳を過ぎてもITエンジニアをやっているのは管理職になれなかった落ちこぼれのような扱いをする会社もあります。これではITエンジニアを40歳を過ぎても続けていくモチベーションが上がりません。

本来であれば技術力は会社のアドバンテージであり、経験を積み重ねた熟練エンジニアを大切にしなければならないところです。これが理由で40歳でITエンジニアを辞めて管理職に転向する人も多くいます。ただし、ITエンジニアに求められる素質と管理職に求められる素質はまったく別物ですので、こうした経緯で生まれた管理職には、残念ながらあまり優秀な管理職はいません。

まとめ

今回はITエンジニアが40歳で限界かどうかについて様々な角度から検討してきました。40歳で限界かどうかはそのITエンジニアの考え方で決まります。新技術に興味を持ち、普段から自分の技術力向上に余念がないITエンジニアはいつまでも一線で活躍できます。

また、IT技術と並行してプロジェクトマネジメントのスキルも磨く必要があります。最後は立場的な障害ですが、これは個人の努力ではどうにもなりません。熟練エンジニアをきちんと評価してくれる企業でなければ、転職を検討するのも良いでしょう。他の業界の技術者と同様、ITエンジニアも向上心さえあれば40歳を過ぎても十分続けられる職業だと言えるでしょう。

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