2020/05/08更新

淘汰が進む日本のQR決済の現状について考察

国民的アニメのサザエさんのテーマ曲に「買い物しようと街まで出かけたが、財布を忘れて愉快なサザエさん」という歌詞があります。財布を忘れてしまうと買い物ができないのに、おっちょこちょいなサザエさんという意味を持つこの歌詞ですが、現在では財布を忘れても買い物ができる世の中に成りつつあります。それがスマートフォンで決済を可能とした「QR決済」というサービスです。数年前から、このQR決済サービスは急拡大していますが、ここにきて新たな局面を迎えつつあります。そこで今回はQR決済の現在について考察を行います。

淘汰が進むQR決済業界

「雨後の筍」という言葉があります。物事が次々と現れることを意味するこの言葉は、QR決済市場の現状をよく表しています。中国などのQR決済先進国から遅れること数年、ようやく日本でもQR決済が動き始め、通信キャリア、IT各社、銀行、小売、さらには商店街などといった様々な企業が続々と参入してきました。ただ、どの企業もシェア獲得に苦戦していた中、この流れを急加速させたのが「還元キャンペーン」です。

決済した料金の20%にあたる分を還元するなど、QR決済サービス事業者は赤字覚悟でシェアを伸ばすための施策を展開することで、一気に普及率が上がったのです。ただ、この施策はQR決済サービス事業者自身の経営を苦しいものとしてしまいました。その結果、買収や提携が進み、QR決済サービス自体が淘汰されはじめたのです。その結果、日本におけるQR決済は大きく以下の4陣営に集約されつつあります。

Yahoo(PayPay)・LINE(LINE Pay)

まずは現在最も勢いがありシェアを獲得しているYahooのPayPay陣営です。ソフトバンクグループであるYahooは圧倒的な資金力を背景に派手な還元キャンペーンを繰り広げ、シェアを急拡大しました。単独でも大きな存在感を示していたYahooのPayPayですが、さらに衝撃の一手を打ってきました。それが、2019年11月に発表されたYahooとLINEの経営統合です。MMD研究所の調査によれば、利用率1位と4位という強者同士の統合となります。

日本のテック業界を牽引してきた2社の経営統合ということで、私たちITエンジニアのみならず、ユーザーにも大きなインパクトを与えるニュースとなりました。Yahooの「資金力」に、LINEの「生活に根ざしたコミュニケーションプラットフォーム」が加わることで、日常生活の全てがアプリに集約された「スーパーアプリ」に最も近い存在といえるでしょう。

NTTドコモ(d払い)・メルカリ(メルペイ)

次はNTTドコモが展開しているQR決済サービスであるd払いを中心とした陣営です。先ほどご紹介した調査結果によれば、NTTドコモのd払いの利用率は3位となっています。ただし、ソフトバンクグループにも匹敵する豊富な資金力に加え、携帯電話の契約数第1位という事実はかなり大きいアドバンテージとなるでしょう。このNTTドコモのd払いに、メルペイを運営するメルカリが加わることになりました。

ただ、メルカリはメルペイへの先行投資がかさみ、2019年12月の中間連結決算は約141億円の赤字となっており、QR決済のビジネスは決して順調とは言い難い状況にあります。さらに、2016年よりOrigami Payを運営していた株式会社Origamiがメルカリグループに参画することも発表されました。NTTドコモと提携することでどのようなシナジー効果が生まれるのか注視したいところです。

KDDI(au Pay)

KDDIが展開しているau Payは、QR決済関連の提携はまだ見せていませんが、三菱商事やローソンと組み、Pontaポイントとの提携を発表しました。au Payの利用率は第5位に留まっていますが、NTTドコモ同様に豊富な資金力を有しています。その資金力を活かして2020年2月には毎週10億円還元キャンペーンを展開するなど、シェアの拡大に本腰をいれてきたようです。au PayはQR決済だけではなく、じぶん銀行などKDDI関連のサービスとの提携により、どこまでユーザーを取り込めるかがカギとなりそうです。

楽天(楽天Pay)・JR東日本(Suica)

最後は楽天Pay陣営です。日本のテック業界を代表する1社である楽天もQR決済サービスを展開しています。利用者数も2位につけており、順調にシェアを拡大しています。この楽天はJR東日本が展開している交通系ICカードであるSuicaとの提携を発表しました。QR決済とICカードという異なるサービスが提携することで、互いの領域を食い合うことなく、住み分けながら利用者を増加させることができるでしょう。

何と言っても強みは、楽天が有する「楽天経済圏」です。様々なサービスを1つのIDに集約することにより、ユーザーはポイントによる還元などを受けやすくなり、楽天は様々な購買データを収集することが可能となっています。もちろん、資金力も問題ないため、今後も他陣営と熾烈な競争を続けていくことでしょう。

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