2020/03/10更新

2019年のIT・WEB業界で起きたニュースを振り返る!現役ITエンジニアがトップ10形式で解説

早いもので2020年が始まって1/6が経過しました。皆さんにとって2019年はどのような年でしたか?1年で様々なことが起こったのではないでしょうか。IT業界も、2019年は様々なニュースがありました。ただ、その時は大々的にニュースで取り上げられても、その後いつのまにか風化してしまい、私たちの記憶から消え去ってしまうことが多いものです。そこで今回は2019年にIT業界で起こったニュースについて、個人的に気になったものをトップ10形式でご紹介します。

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10位 QTNetの障害

10位はQTNetの障害を選出しました。2019年11月末、突然楽天Payや楽天カードが使用不能に陥りました。このニュースは、QRコード決済が注目されている時期でもあったため、報道でも大きく取り上げられることになりました。楽天はこれまでも度々システムトラブルを起こしていたことから、このトラブルも楽天に原因があるのでは?と予想する人もいました。ただ、この件については、楽天に直接的な責任はなく、九州電力系の通信子会社であるQTNetという企業が運営しているデータセンターに障害が発生したことによるものでした。

そのため、楽天の他にも福岡県庁、九州電力、世田谷区など約260の企業や団体に影響が発生しました。障害の原因としては、電源設備の更新作業時に、無停電機能を外したまま予備電源に切り替えてしまったという、およそ信じられないものでした。

AmazonのAWSやMicrosoftのAzureではなく、実績や国内事業者であることを考慮して、九州電力を母体とするQTNetが選択されたのではないかと考えます。ただ、あらかじめ社内で定められていたであろう切り替え時の手順を遵守していれば、確実に防げた障害ではないかと思います。そして、その手順が遵守されなかったということは、安全で堅牢なデータセンターというイメージを壊してしまいました。

9位 AWSの東京リージョンにおける大規模障害

10位に続いて選出したのは、AWSの東京リージョンにおける大規模障害です。2019年8月に日本国内の様々なサービスが一斉に停止しはじめたり、アクセスしづらい状況が頻発しました。仮想サーバーのEC2、仮想データベースのRDSをはじめ、AWSが提供する様々なサービスで障害が発生し、復旧まで数時間を要するというこれまでに前例がないほどの大規模障害となったのです。

これまでクラウドが安全とされていた理由としては、「マルチAZ」と呼ばれる考え方があるためでした。マルチAZとは、1つのリージョンの中にも複数のデータセンターのようなものがあり、お互いが常に同期して動くというイメージです。仮に1つのデータセンターが停止しても、他のデータセンターが稼働していればクラウドサービスとしては何の影響もなく稼働し続けることができるというものでした。この「マルチAZ安全神話」は、今回の障害により崩れ去ったのです。

この障害の原因は空調装置のバグだったとのことですが、オンプレミスであれどクラウドであれどデータが完全に安全だとは断言できないということを再認識させられる結果となりました。今後はリスクを分散させるために、単一事業者のクラウドによる構成ではなく、複数事業者のサービスを組み合わせるマルチクラウドや、オンプレミスとクラウドを併用するハイブリッドクラウドといった選択をする企業や団体も増加してくることでしょう。

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8位 神奈川県庁のHDD流出

8位に選出したのは、神奈川県のHDDが廃棄業者を通じて、オークションサイトで転売されていたという事件です。これにより個人情報や県の重要情報という極めてセンシティブな情報が漏洩してしまいました。事件の概要としては、神奈川県と富士通リースがHDDなどのリース契約を結んでいたのですが、契約満了に伴い、神奈川県は富士通リースにHDDを返却しました。

その後、富士通リースはデータ削除業者であるブロードリンクという企業にHDD破棄を委託しますが、このブロードリンクの社員がHDDを盗難し、ヤフオクやメルカリで売却していたというものです。今回の事件は、セキュリティに対する考えが如何に甘いかを表しています。神奈川県庁はHDDがきちんと破棄されたという証明を富士通リース側へ要求するべきでしょう。富士通リース側も、ブロードリンクへ委託をしたのならばきちんと作業が完了したエビデンスを要求すべきです。

更にはブロードリンクという企業の内部でも、複数人によるチェックなどをきちんと実施してれば1人の社員の愚行がここまで見過ごされることは無かったのではないでしょうか。セキュリティ事故は私たちの近いところで発生しています。私たちITエンジニアも、業務で個人情報は秘匿性が高い情報を扱うことがしばしばあります。このような報道を耳にした際は、自身の行動を改めて振り返り、セキュリティに対して高い意識を持つようにしましょう。

7位 日本電子計算株式会社 自治体専用IaaSサービスの障害

7位は日本電子計算株式会社が運営している自治体専用IaaSサービスである「Jip-Base」の障害です。Jip-Baseとは、各自治体に向けた業務システムを提供しているクラウドサービスです。

2019年12月4日にJip-Baseが使用しているストレージが故障したと検知されますが、以降2週間に渡って障害が全面復旧することはありませんでした。被害は全国の53自治体に及び、そのうち33自治体については一部のデータが破損してしまい、復元できないという最悪の事態となっています。これにより、税務処理、戸籍管理、さらには通知表管理・作成などの機能を持つ教育ネットワークシステムなどが使用不能となったようです。

この問題の根本原因は、Dell EMC社が提供していたストレージのファームウェアに関する不具合ですが、日本電子計算株式会社が構築していたバックアップシステムにも不具合があったため、復旧が難しくなってしまったようです。更には初動の遅れに加え、度々変わる報告内容が、ユーザーの対応に迷いを生じさせてしまい、被害が大きくなってしまった印象を受けます。

どれだけ万全だと思っても、システム障害は発生してしまいます。ただ、その障害が発生した場合の対応やフローをきちんと考え、常に整備しておく必要があります。今回の件も、日本電子計算株式会社が被害者ではありますが、バックアップがきちんと取得されていれば、ここまで大きな問題とはならなかったのではないでしょうか。

6位 アメリカによるHuaweiの締め出し

6位はアメリカによるHuaweiの締め出しです。米政府は2019年5月に安全保障情報の脅威を理由に、Huaweiに対して事実上の輸出禁止措置を発動しました。更に同年8月には連邦政府機関がHuaweiをはじめとする中国企業5社からの調達禁止、同年11月には、米国内の通信会社が政府補助金を使用してHuaweiとZTEから調達することを禁止しました。

Huaweiという企業の成り立ちは、中国の人民解放軍と深い関係があり、現在も中国共産党と深いつながりがあるとされています。そのため、以前から疑惑の目は向けられていました。このような背景に加え、米中貿易戦争や5Gの覇権争いなど、様々な要素が複雑に絡み合って現在の状況となっています。

何が事実なのかは、私たちには判断できない部分が大きいのですが、この締め出しのトリガーの1つと言われているHuaweiのCFOがカナダで逮捕された際に、この人物が中国や香港から発行されたパスポートを7通も保持していたということです。この部分だけを見ても、Huaweiの異常性を感じてしまうのは私だけではないはずです。

5位 広がるGAFA包囲網

5位に選出したのは、GAFAに対する包囲網の拡大です。近年大きな力を持つようになったGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)ですが、年々その包囲網が構築されつつあります。これまではGDPR(EU一般データ保護規則)などのように欧州による規制が主でしたが、2019年は遂にGAFAを抱えるアメリカでも司法省などがGAFAに対する調査を開始しています。

更には我が国日本でも、2020年に「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法」という日本版GAFA包囲網ともいうべき法案の提出を行うべく、全省庁が一体となって取り組んでいるようです。GAFAはこれまで個人情報を収集することで、パーソナライズした広告などを展開し、莫大な利益を挙げてきました。

ただ、個人情報はメガプラットフォーマーのものではなく、あくまでも個人のものだという考えが主流となりつつあります。現在は向かうところ敵なしのGAFAですが、近い将来にそのビジネスモデルを大幅に転換しなければならない時期が来ると見られています。

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4位 改元対応

4位は改元対応を選出しました。2019年4月1日に菅義偉官房長官が新元号となる「令和」を発表しました。それから1カ月後の同年5月1日に「令和」の時代がスタートすることになりました。日本は同じ日時であっても「西暦」と「和暦」という2つの表現方法を持っています。この和暦が変わるとき、IT企業は切り替え作業に奔走することになります。2019年も平成から令和へ変わったことで、IT企業はその切り替え作業に追われました。

ですが、どの企業も万全な対策を講じていたにも関わらず、改元に関する不具合が全国で多発したのです。この改元対応に関して、ITエンジニアの立場から思うことが2点あります。

1つは改元という将来確定しているイベントに対して、設計がずさんなシステムが多いということです。改元対応に関する不具合にも様々な種類がありますが、「令和元年」と表記すべきものが「平成」のままであったというのは、まだ許容範囲だと思いますが、ある銀行のATMでは「2019年5月7日」と表示されるべきところが、「1989年5月7日」と表記されてしまったということです。

内部的な処理において「令和元年」を「平成元年」としてしまったものと考えられますが、このようなロジックが存在していること自体がナンセンスだと感じてしまいます。私たちITエンジニアは与えられた予算の範囲内で、極力このような予測される将来に対して柔軟な対応ができるシステムを設計しておく必要があるのです。これは機能として目に見えないところではありますが、皆さんにはこういった「気が利く」ITエンジニアになってほしいと願っています。

もう1つはそもそも和暦というものを見直す必要があるという点です。和暦という制度自体は日本の文化であり、否定する気はありません。ただ、それをシステムで実現する必要がどれくらいあるのでしょうか。本来は西暦で事足りるはずです。日本もそろそろ全体の生産性を考えて、必要なものは残し、不要なものは見直していく時期が来ているのかもしれません。

3位 消費税増税

3位は消費税増税です。2019年は改元対応に続き、消費税も変更されたため、IT企業にとって忙しい年となりました。今回の消費税増税はこれまでのように一律アップではなく、日本で初めて軽減税率が導入されたため、多くのIT企業が対応に時間を要したようです。そして、この消費税増税でも全国で不具合が多発しました。

幾つか例を挙げると、大手回転寿司チェーンであるスシローでは、消費税を0%、別の都内のある飲食店では消費税を18%として会計してしまったりといった具合です。IT企業はこのような社会の変化や法律の変化と密接に関わっています。ITエンジニアとして、現在世の中で何が起こっているのか、その仕組みはどういったものなのかということに興味を持つようにしましょう。それは社会人の常識としてだけではなく、ITエンジニアとしての業務にも必ず活きるはずです。

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2位 7Pay問題

2位は7Pay問題です。7PayはセブンイレブンのQRコード決済サービスとして、大々的にスタートしましたが、相次ぐ不正利用により2019年9月末でサービス終了という最悪な結果となってしまいました。7Payに関しては様々な問題が指摘されています。インターネットで検索した情報によれば、一時期開発中のプログラムがGitHub上に公開されていたという情報もあります。

また、7Pay自体も二要素認証が無かったり、本人ではなくてもパスワードをリセットできるといった信じられないレベルの仕様が明らかとなっています。日本ではようやくQRコード決済が動き始めましたが、7Payのサービス終了はQRコード決済そのものの信頼性を揺るがすような大きな問題となってしまいました。

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1位 YahooとLINEの経営統合

さて、いよいよ1位となりました。私が考える2019年のIT業界における最大のニュースは、YahooとLINEの経営統合です。2019年11月、このニュースが報道されるとIT業界には激震が走りました。YahooとLINEは日本のテック業界をリードする2社です。両社はメディア、コンテンツ、Eコマース、Fintech、そしてAIとかなりの分野の事業が重複しており、様々な分野で激しい競争を繰り広げていました。

その2社が経営統合するというのは、おそらく誰もが予想していなかったのではないでしょうか。これはLINEやYahooで働く社員自身が報道で知ったようなので、極秘レベルでスピーディーに進められたことが容易に推測できます。その視線の先にはGAFAやBATHといった世界のプラットフォーマーを捉えています。両社のトップは、このまま何もしないと日本のITは全てがGAFAやBATHに奪われてしまうという危機感から、今回の決断に至ったと話しています。

この経営統合は、日本のテック業界を再編していくはずです。国内では圧倒的な規模となったYahoo+LINE陣営に対して、楽天もそのグループを拡大しつつあります。おそらく、2社は国内の有望なサービスを全て飲み込んでいくのはでないでしょうか。

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まとめ

今回は2019年の総括として、IT業界の気になるニュースを10個ピックアップしました。ニュースは何気なく報道を見たり、記事を読んだだけでは、ただの情報でしかありません。そこから一歩踏み込んで背景に隠れているものや、意味を考えるようにしましょう。

さて、2020年はどんなニュースが飛び込んでくるのでしょうか。2020年の総括では良いニュースが並ぶことを期待しています。

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