2020/03/10更新

2019年のIT・WEB業界を主要キーワードで振り返ろう!現役ITエンジニアがトップ10形式で解説

IT業界は、毎年様々な技術が誕生しています。2019年も多くの技術が生まれました。その多くは、いわゆるバズワード(流行用語)として、短い生涯を終えるものがほとんどです。ですが、その中の幾つかのキーワードは、これまでの社会の在り方そのものを変え、新しいものを生み出す力を持つものもあります。

そこで今回は、ITエンジニアの私が2019年に個人的に気になったキーワードについて、トップ10形式でご紹介します。

↓「2019年まとめ」関連記事はこちら


10位 RPA

10位にはRPAを選出しました。「AIが仕事を奪う」と危惧する声を聞きますが、一部の人間にとって、ライバルはAIではなくRPAなのかもしれません。RPAとは、Robotic Process Automationの略であり、ロボット(実体はソフトウェア)により、定型業務を自動化するという技術です。RPAとAIを同じようなものと混同している方もいらっしゃいますが、RPAという機能自体は、あくまでも予め決められたロジックを元に処理を行うだけであり、AIと直接的な関連はありません。

2019年は、RPAを導入する企業、導入後一定の効果を確認した企業や団体が急速に増加しました。表向きな理由としては「働き方改革」の一環としてRPAを導入するケースが増えているようですが、実体はより生産性を上げるため、より人件費を抑えるために導入しているとみるべきでしょう。では、RPA導入の実例を幾つか見てみましょう。1つ目はさいたま市の導入結果に関する報告です。さいたま市では、導入前後で4課10業務の作業時間を全体で約75%削減することに成功したそうです。

また、AGCは2019年9月までに約4,200時間の業務時間削減に成功し、2020年1月までに更なるRPAの導入を決めたようです。近い将来、オフィスにおけるデータ入力などの単純作業は、次々とRPAに置き換えられていくことでしょう。

▼関連記事

9位 AI-OCR

9位にはAI-OCRを選出しました。このAI-OCRとは、RPAと親和性が高い技術です。日本の企業は、まだまだ業務の中で紙を使うケースが多いため、現在でも紙に記載された文字をデータ化するという仕事が存在します。このような業務は重要な仕事ではあるものの、新たな価値は生み出さない仕事です。そのため、このような業務はOCRに置き換えられてきました。

ただ、私たちが書く「文字」は個人の癖が出やすく、単純に判断するのが難しいのです。そのため、OCRの識字率はお世辞にも高いとは言い難いものだったのです。そこでAI-OCRという技術が必要となります。AI-OCRは、情報の読み取りを繰り返すことで、識字率の向上や判断の高度化ができるようになりました。RPAに加えて、AI-OCRを導入することで、事務作業の大部分を削減できるのではないかという期待が高まっています。

8位 ディープフェイク

8位にはディープフェイクを選出しました。ディープフェイクとは、任意の動画に対して顔を置き換えることによってつくられる「偽物の動画」を指します。「偽物の動画」が偽物とすぐに分かるレベルであれば大きな問題とはならないかもしれませんが、問題はそのクオリティです。誰がみても偽物とは簡単にわからないような、極めて本物の動画に近いクオリティなのです。

恐ろしいのはベースとする動画に対して、1枚のセルフィー画像さえあればディープフェイク動画が作成できてしまうという点です。現在、インターネットではこのようなディープフェイク技術を悪用して作成された、アイドルや女優のポルノ動画がアップされています。最先端技術は素晴らしい可能性を持っていますが、使い手の欠如した倫理観により最悪の技術となる危険性も秘めているのです。

7位 セキュリティ

7位はセキュリティを選出しました。毎年セキュリティ事故は発生していますが、2019年も様々なセキュリティ事故が国内外で発生してしまいました。Facebookの5億件超にも及ぶ個人情報漏洩、オージス総研の宅ファイル便による約480万件の個人情報漏洩、トレンドマイクロ社の元社員による約12万件の顧客情報盗難および売却、そして7Payの不正アクセスなど、挙げればキリがありません。

ITは私たちの生活を便利にしてくれるものですが、常にセキュリティに関する問題がリスクとしてあることは認識しておかなければなりません。さらに、ITエンジニアの立場としては被害者だけでなく、1歩間違えば簡単に加害者側になる可能性もあるのです。このようなセキュリティ事故について、決して対岸の火事ではなく、自身が関わるプロジェクトに問題はないのかを重ね重ね確認するようにしましょう。セキュリティに絶対はありません。どれだけ対策をしても十分ではないのです。

▼関連記事

6位 シェアリングエコノミー

6位にはシェアリングエコノミーを選出しました。シェアリングエコノミー市場は2018年度に過去最高となる1兆8874億円に到達したそうですが、2019年は更に大きな成長を遂げていることと思います。

数年前まではシェアリングエコノミーを一過性の流行と捉えるような意見もありましたが、現在ではシェアの対象が「空間」「モノ」「スキル」「移動」「お金」など、あらゆるものに広がってきています。シェアリングエコノミーは、これまでに存在しなかった新たな経済圏を確立しはじめています。私たちは普段様々な課題を感じながら生活をしています。「ちょっと不便だな」と思っても大抵の場合は、我慢したり割り切っていたのです。

これがITの力により「何かを求めている人」と「何かを持っている人」のマッチングが容易になったことにより、私たちの身近にあった課題を解決することができるようになったのです。ITは私たちの生活、そして社会を大きく変える可能性を秘めています。このシェアリングエコノミーも、社会構造の在り方を劇的に変える可能性を持ったキーワードといえるでしょう。

▼関連記事


5位 情報銀行

5位は情報銀行です。2019年は日本で情報銀行が大きく動き出した年となりました。現在、世界ではGAFAが個人情報を活用したビジネスモデルを確立しています。そして、そのビジネスにより大きな利益を得ていますが、一方でGAFAへの批判は年々高まりつつあります。この情報銀行という制度は、日本独自の制度であり、世界に対して個人情報をどう扱っていくのかというモデルケースとなる可能性があります。

情報銀行は、日本政府が標準化や運用に介入することで、官民が一体となって個人情報の活用を推進しようとしています。また、情報を提供する個人に対しても利益を還元する仕組みを導入しようとしています。このようなポイントは、明らかにGAFAなどといったデジタルプラットフォーマーと言われる企業のビジネスを意識したものでしょう。現在、情報銀行の認定を受けているのは、三井住友信託銀行株式会社、フェリカポケットマーケティング株式会社、株式会社J.Score(みずほ銀行とソフトバンクの合弁会社)の3社となっています。

今後も認定を受ける企業は増えていくと見られていますが、本当に各企業が欲しいデータが共通化できるのか、ユーザーが個人情報を提供するのかといった課題も存在します。官民が連携することによるメリットもありますが、その連携は足枷になる危険性もはらんでいるのではないでしょうか。

▼関連記事

4位 進化するFintech

4位に選出したのは、進化するFintechです。2019年は日本でFintechが大きく成長した年となりました。Fintechとは、Finance(金融)×Technology(技術)を合わせた言葉ですが、様々なFintechサービスがスタートしています。その中でも最もFintechを牽引したのは、決済関連でしょう。様々な事業者がQRコード決済サービスをスタートしました。

赤字覚悟で利益還元キャンペーンを行ったことにより、多くのユーザーがQRコード決済デビューをすることになりました。また、先ほど「情報銀行」のテーマで登場したJ.Scoreは、日本で初めてAIを活用した個人融資サービスをスタートしています。これまで日本の金融は銀行などをはじめとする金融機関が牽引してきました。

ですが、Fintechの登場により、お金を貯める、お金を借りる、お金を払うなどといったお金に関する活動の中心が、銀行からFintech企業へ移りつつあります。テクノロジーは既存の業界を破壊し、新たな価値を創造します。今後、地方銀行は再編されていくと見られています。10年後には、現在では想像できない金融システムが実現されているかもしれません。

▼関連記事


3位 マルチクラウド・ハイブリッドクラウド

3位に選出したのは、マルチクラウドとハイブリッドクラウドです。クラウドサービスが出始めた頃は、「信用できない」「セキュリティ上の懸念がある」といった声が大きく、なかなか導入に至りませんでした。ですが、メガバンクをはじめとする様々な企業の導入により、「オンプレミス(自社設備による運用)よりもクラウドのほうが安全である」という意見が一般的となりつつあります。実際にクラウドサービスには、冗長構成やバックアップなど、安全に運用するための様々な仕組みが用意されています。

ですが、2019年発生したAWSの東京リージョンにおける大規模障害などを契機として、これまでの様な1社のみのクラウドサービスでは、障害を完全に回避するのは難しいという意見が強まっています。そして、こういった問題を解決するために、マルチクラウドやハイブリッドクラウドといったキーワードが注目されているのです。

マルチクラウドとは、複数社のクラウドサービスを使用することを指します。簡単に言えば、Amazon社のAWSとMicrosoft社のAzureの2種類のクラウドサービスを使用するといった具合です。また、ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスとクラウドの併用を指します。クラウドサービスは優れた最先端技術ですが、今後はこういったマルチクラウドやハイブリッドクラウドといった考え方が主流となっていくでしょう。

▼関連記事

2位 DX化

2位はDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進です。海外と比較すると日本のDX化は遅れていると言われていましたが、ようやく日本のDX化も進み始めたようです。電通デジタルの調査によれば、約70%の企業がDX化に着手しており、そのうち約60%の企業がDXで一定の成果が出ているとのことです。

ただ、企業が言う「一定の成果」に定義はなく曖昧な点には注意です。DX化に取り組む企業とそうではない企業の差は、今後顕著にでてくるのではないでしょうか。何れにしても、どのような業界や企業であれど、デジタルを無視した経営を進めていては、競合他社との競争に勝てない時代が来ています。実証実験としてのDX化だけではなく、経営方針に即したDX化を進めていく必要があります。

そして、このDX化の推進は、ITエンジニアにとって大きなチャンスとなります。現在、多くの事業会社はシステムを外注するケースが多いのですが、DX化によりITシステム自体が競合他社との差別化要因になってくるはずです。そのような場合、システム開発は外注から内製化へと舵を切るタイミングがやってくることでしょう。

内製化により、事業会社自体がITエンジニアを抱えるようになれば、ITエンジニアが活躍できるフィールドは各段と広がるはずです。日本におけるITエンジニアの地位はまだまだ高いとは言い難いですが、DX化などのようにITエンジニアが社会に必要とされるケースが増え始めています。おそらく、ここ数年でITエンジニアを取り巻く状況は、大きく変わってくるかもしれません。

▼関連記事

1位 QRコード決済

いよいよ1位の発表です。2019年の第1位はQRコード決済を選出しました。4位の「進化するFintech」ともやや重複するキーワードですが、2019年といえばQRコード決済と言えるほど、ユーザー層の拡大、ユーザー数の増加、サービス認知度の向上などを実現しました。街中で買い物をしていると、決してITリテラシーが高くないであろう高齢者でも、スマートフォンを片手にQRコード決済をしている姿をよく見かけました。

決済手段の1つとして市民権を得たといっても過言ではないでしょう。ただ、課題も少しづつ見え始めています。LINE、メルカリ、NTTドコモ、KDDIは、QRコードを普及させるために「敵は現金」を合言葉に、加盟店の開拓を協力して進めていました。この提携は、YahooとLINEによる経営統合の煽りを受け、1年も持たずに解消することになったのです。

また、現在QRコード決済サービスを使用しているユーザーの中には、還元があるからという人も少なくありません。このようなキャンペーンが終了した場合に、QRコード決済から離れるユーザーは一定数存在するでしょう。このような背景により、最終的にQRコード決済サービスは、最終的には数社へ収斂されていくことになるでしょう。

そして、QRコード決済事業者同士が消耗戦を繰り広げている間に、新たなキャッシュレス決済サービスが生まれる可能性もあります。1年後、QRコード決済は私たちの生活に密着した存在となっているのでしょうか?それともレジの片隅に追いやられた存在となっているのでしょうか?2020年もQRコード決済に引き続き注目しておきましょう。

▼関連記事

まとめ

今回は2019年の総括として、IT関連のキーワードを10個ピックアップしました。皆さんは何個くらい知っていましたか?IT業界は、次から次に新しい言葉が誕生しています。分からない言葉があれば、その都度1つずつ消化していくようにしましょう。さて、2020年はどんなキーワードが生まれるのでしょうか?私たちを驚かすようなキーワードが生まれることを楽しみにしておきましょう。

image byFreepikによるデザイン